2014年11月24日月曜日

茶色へ

雨の夜、ふらふらになりながら、お別れを言いに来てくれた。

命あるものは必ず死ぬ。

あなたが亡くなったから悲しんでいるんじゃないよ。
全くなついてくれなかったけど、
最後にうちを思い出して、たどりついてくれたこと
いじらしくて、可愛くて。

この冬は厳しいだろうなと、あたたかい寝床を二つ用意しておいて良かった。

弱って行くあなたに、何もしてあげられなかったけど
背中をなでてあげたら、少し嬉しそうな目をしたね。
誰からもなでられた事がなかったかと思うと、手をとめるわけにはいかなかった。

元気な頃は、大きくて、目つきがするどくて、怖かった。
私は犬派で猫は苦手。
震災後に保護した白い猫ちゃんに情が移ってしまい...
そのボーイフレンドがあなただったけど、他にも彼女がいると近所の人に聞いて、腹を立てたりした(笑)。

でも、眠っているあなたは、ぬいぐるみのように愛らしくて、胸の毛が真っ白で。
本当にかわいい子だったんだね。

葬儀屋さんに電話をしたとき、名前と年齢を聞かれて、絶句した。
好きなおもちゃを棺に入れてくださいと言われて、涙が出た。
おもちゃも持っていないし、おもちゃで遊んだ事なんか、ないよね。
名前だって、”茶色”としか呼んでなかった。

あなたはどこで生まれて、小さい頃はどんな顔だったんだろうね。

厳しい冬を何度乗り越えたんだろうね。

整然とした住宅街。
ゴミ一つ落ちていない街。

そんなものは嘘だと思う。

健康な人もいれば、そうでない人もいて。
ケンカしてる犬もいれば、あなたのような猫ものんびり昼寝して。

いろんな生き物がいろんな価値観を持って、時にぶつかりあいながら、でも、自然と肩を寄せ合って生きて行く
そのほうがほっとするよね。

規格外のものを排除する、役に立たないものを疎ましく思う
ベルトコンベアーのような社会は、息がつまる。

小さい頃、隠れ家と称した神社の一画に、
子犬をかくまって、家から食べ物を持って行ったりしたな。
ミルクを飲む様が、未だに忘れられない。
自分が動物を好きになったのではなくて、
動物からその暖かさ、かわいさ、命の強さ、儚さを教えてもらった。
勉強したって、人から教えられたって、分かるものじゃない。
言葉を持たない生き物も、懸命に生きてるんだと...その体温から、学んだ。

茶色、生まれ変わったら、まっすぐにうちにおいで。

雨の中、苦しい中、本当によく来てくれた。

もう寒い思いも、寂しい思いもしなくていいから。

お骨になって戻って来てくれたあなたは、あまりにも小さくて軽くて...言葉が出なかった。
もううちの子だから。



元気な頃

オリーブの木の下で

猫ちゃん(白)と昼寝












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