2012年2月20日月曜日

ありがとう

”初めて自分一人で使えるリモコンと出会いました” 

ある視覚障害者からの言葉。

私は今まで何を考え、何を目にしていたんだろう。
そして私を含め、社会は何を追い求め、何を置き去りにしてきたんだろう。

目をつぶって、テレビのリモコンを触ってみる。

今まで生きてきて、リモコンで不自由な思いをしていらっしゃる方がいるとは、考えもしなかった。
ラクエア専用リモコン開発のお手伝いをさせていただいたからといって、製品の宣伝をするつもりじゃない。
”一人で使えるリモコン” は全盲の方にも使って頂けるリモコンだったんだ。

ラクエアのリモコンはダイヤル式だ。
タッチパネルが普及している今、一見、時代に逆行しているかのように見える。
先日、ある展示会で、タッチパネルのリモコンを見て、正直、まぶしく思えた。
おしゃれだなあ と。

でも冒頭の言葉で、それは吹き飛んだ。
同時に、スマートフォンが普及したら、視覚障害の方はどうすればいいんだろうと。

ビジネスは収益を上げてなんぼの世界。
ボランティアじゃない。
でも、お金儲けよりわくわくすることが確実にここにはある。

これからも困難にぶつかり、右往左往するだろう。
社会に認知されるにしたがって、批判を受ける事もあるかもしれない。

でも私は泣きべそをかきながらでも、絶対に前に進んで行けると思う。
私には夢がある。
そして、一緒に仕事をしている仲間、研究者たちの誠実さ、ひたむきさ、妥協を許さない厳しさを私が一番よくわかってるから。

起業を決意してから、もがき苦しんだ3年だった。

冒頭の言葉は、神様からのプレゼントかもしれない。
その言葉は、思い上がった私を謙虚にする。

ありがとう。

2012年2月11日土曜日

想いが形に

経営なんて全然わからない私が起業を決意した理由.. それは高齢者や情報弱者を置いてけぼりにするテクノロジーの進化を許す社会への怒りのようなものだった。
若くて健康な人だけが便利さを享受する世界、おかしいやん!って。
高齢者向けとされる製品は、文字が大きく、ボタンが大きく、機能が少なく。
デザイン的にも???
年取ったんだから、しょうがないやん、これでも使っとけば? と製品がうっすら笑ってるような。

1年前、ダイキン工業の方が関西からはるばる研究室を訪ねて来てくれた。
うちの会社なんて、ダイキンさんに比べたら、巨像とミドリムシ、ピラミッドと砂粒のようなもの。緊張した。

でも、びっくりした。話をしているうちに、初対面なのに、考えている方向性が同じだった。
”人に聞かずに使えるリモコンを作りたい” 

機械操作が苦手な人が楽に使えるリモコン
苦手な操作をそっとカバーしてあげるような
真に使う人の目線にたった製品を作りたい

プロジェクト途中で、震災が発生、また今までとは全く違った製品を生み出す苦労、決して容易なものではなかった。
調査、実験検証、いくつもの階段を乗り越えて出来上がった、新型リモコン。
最終検証は眼球運動測定。 機械操作が苦手な方がすいすいと操作をこなしていく。
背中が粟立つのを感じた。

仕事をさせていただいたから言う訳ではないが、ダイキン工業のものづくりは素晴らしい。
何がこんなにも彼らを動かすのだろうか。
その目線の先には、使う人 がいる。

先日、ダイキン社の空気清浄機が回収されるという出来事があった。
あるカスタマーのツイート。
  ダイキンの空気清浄機リコールも、使用者が喫煙所で手入れもせずに使い続けたのが問題らしい。
  17万台中2台。それで最新機種との無償交換とは…。
  カスタマーを想う企業姿勢、どこぞの企業も政治屋も見習って欲しいもんだ。
同感だ。

無事に製品発表も終わり、ほっとしているところです。
千葉市の熊谷市長も会見、製品への感想をブログで書いて下さった。
http://kumagai-chiba.seesaa.net/article/251464728.html#comment

私が一生を終えるとき、このプロジェクトが頭をよぎると思う。
素晴らしい人たちに支えられ、想いのこもった製品作りのお手伝いが出来た事、感謝します。
製品発表の夜、犬の散歩をしながら、少し涙が出た。
文化祭が終わったような寂しさ、祭りの後の寂しさ。

新しい扉が開かれる瞬間に立ち会う事が出来た感動。

しあわせだった。

15年